事業譲渡後倒産が5年間で946件、食品製造が最多

 東京商工リサーチが発表した「事業譲渡後の倒産動向調査」結果によると、主要な事業を他社に譲渡し、その後に特別清算や破産などの倒産手続きに入る「事業譲渡後の倒産」が、過去5年間で946件あることが分かった。この件数は、5年間の倒産件数(3万7707件)の2.5%にあたる。2023年度は倒産した9053件(前年度比31.5%増)のうち、210件(同32.0%増)と大幅に増えた。

 946件を業種別でみると、最多が「食料品製造業」の72件。食品製造設備や生産体制は、品質や衛生面で高い水準を求められるため、事業価値として評価されやすいとみられる。次いで、「宿泊業」の63件。旅館・ホテルは典型的な装置産業で、設備投資や運転資金の負担も重く、負債総額が他業種より突出して多い。新会社への事業譲渡を通じ、旧会社の債務を切り離して再生を図るケースや、オーナー変更で営業を継続するケースなどがある。

 3番目は「飲食店」の53件。飲食店は「居抜き物件」での活用も多く、事業を譲り受けた企業にも初期投資の抑制メリットがある。このほか、上位には「その他小売業」47件、「飲食料品小売業」34件、「織物・衣服・身の回り品小売業」25件などの小売店が入った。また、形態別にみると、最多が「特別清算」の547件(構成比57.8%)で、約6割を占めた。特別清算は株主総会での解散決議後の清算手続きで申請する。

 このため、スポンサーや受け皿会社への譲渡を前提とした「第二会社方式」での事業譲渡が多い。企業グループ内の事業再編で、財務内容が悪化した事業を別のグループ会社が引き継ぎ、旧会社を清算するケースもあり、事業譲渡が既定路線となることが多い。次いで、「破産」が369件(構成比39.0%)で約4割。事業資産の譲渡で、運転資金や破産手続費用の捻出が見込まれるほか、新会社での従業員の雇用が継続される点も期待される。

 業歴別では、「10~50年未満」が最多で527件(構成比55.7%)で半数を超えた。次いで「50~100年未満」が288件(同30.4%)で3割を占めた。老舗企業も多く、業歴を重ねるなかで一定の事業基盤を築いた企業が多い。業歴100年以上の倒産も1件発生した。反面、業歴「10年未満」は128件(同13.5%)と、全体の1割にとどまった。新興企業では譲渡の対象となる事業資産の構築が進まず、従業員の流動化も激しいためとみられる。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198812_1527.html