深刻な「後継者難」倒産、23年度は過去最多の456件

 東京商工リサーチがこのほど発表した「2023年度(4~3月)の後継者難倒産調査」結果によると、2023年度の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1000万円以上)は456件(前年度比10.6%増)で、調査を開始した2013年度以降で最多件数を記録したことが分かった。2017年度(249件)を底に6年連続で前年度を上回り、最多件数の更新は、2019年度から5年連続となる。

 要因別は、最多が代表者の「死亡」の217件(前年度比2.8%増)で、5年連続で前年度を上回った。構成比は47.8%で、半数近くを占めた。次いで、「体調不良」が160件(同14.2%増、構成比35.0%)で、6年連続で前年度を上回った。「死亡」と「体調不良」の合計は377件(同7.4%増)で、6年連続で前年度を上回り、最多件数を2年連続で更新した。このほか、「高齢」が55件(同25.0%増)で、2年ぶりに前年度を上回った。

 少子高齢化が加速しているが、後進の育成や事業承継の準備が遅れた中小企業では、事業を仕切る代表者に不測の事態が起きると、事業継続に重大な障害になることを示している。事業承継には一定の時間が必要なため、後継者育成への早期着手が求められるが、事業承継の決断は難しい。業績が悪化してからの事業承継はより難しくなるだけに、経営者の相談を受け、時には決断を促す人材や公的機関などの育成、開設の重要性も増している。

 産業別では、最多が「サービス業他」の121件(前年度比32.9%増、構成比26.5%)で、2年ぶりに前年度を上回った。このほか、「農・林・漁・鉱業」9件(同28.5%増)と「金融・保険業」3件(同200.0%増)、「運輸業」16件(同14.2%増)が2年連続、「建設業」106件(同26.1%増)、「卸売業」66件(同15.7%増)、「不動産業」16件(同6.6%増)が2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。

 形態別は、最多が「破産」の419件(前年度比10.5%増、構成比91.8%)で、6年連続で前年度を上回り、初めて400件に乗せた。次いで、「取引停止処分」が22件(同29.4%増)で2年連続、「特別清算」が14件(同27.2%増)で2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。業績が低迷する企業では、後継者の育成や事業承継まで手が回らない。代表者に不測の事態が発生した場合、事業継続が難しくなり、破産を選択するケースが多いようだ。

 2023年12月、「事業承継税制の特例措置」の前提となる特例承継計画の提出期限の2年延長が決定した。各種事業承継のための制度だが、業績低迷から抜け出せない企業は多い。さらに、後継者育成や事業承継の準備の遅れから事業継続を断念する企業も少なくない。今後は、倒産と休廃業の境界線があやふやなまま、後継者不足に起因する倒産が増勢をたどるとみられている。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198536_1527.html