「雇用調整助成金」の不正受給、累計670件が公表

 東京商工リサーチが発表した「雇用調整助成金の不正受給企業調査」結果によると、新型コロナ感染拡大に伴う雇用維持のため、従業員への休業手当を助成する「雇用調整助成金」(雇調金)等の不正受給で、全国の労働局が8月31日までに公表した件数が670件に達することが分かった。このうち、2度公表された企業が3社あり、公表された実質企業数は667社(個人企業含む)、不正受給金額は総額206億7947万円に達する。

 前回調査(6月発表)から約3ヵ月で、151件が新たに公表された。2023年3月に月別最多の69件が公表されたが、5月以降も毎月40件を超えており、不正発覚が後を絶たない。不正受給の内訳では、「雇調金」だけの受給が359件と半数(53.5%)を占めた。このほか、パートやアルバイトなど雇用保険被保険者でない従業員の休業に支給される「緊急雇用安定助成金」は111件で、両助成金の受給も200件(同29.8%)と約3割を占めた。

 公表された雇調金等の不正受給670件を地区別でみると、最多は「関東」234件(構成比34.9%)で、続く「近畿」119件(同17.7%)とほぼ2倍の差があった。都道府県別では、「東京都」が87件で最多、次いで、「愛知県」77件、「大阪府」75件、「神奈川県」62件、「広島県」34件、「福岡県」31件、「埼玉県」25件で続く。2023年6月9日までゼロだった「徳島県」と「香川県」でも公表があり、47都道府県すべてで不正受給が公表された。

 産業別では、「サービス業他」が213社(構成比43.9%)で最も多く、「建設業」59社、「製造業」48社と続く。細分化した業種別では、6月10日以降に26社増加した「飲食業」66社(同13.6%)が、前回1位の「建設業」(59社)を上回って最多となった。このほか、コンサルティング業などを含む「学術研究,専門・技術サービス業」と人材派遣業などを含む「他のサービス業」が各40社で続き、コロナ禍の影響を強く受けた業種が目立った。

 法人設立日から公表日までの業歴別では、最多が「10年以上50年未満」の216社で、全体の4割超(構成比44.5%)を占めた。次いで、「5年以上10年未満」が135社、「5年未満が87社、「50年以上100年未満」が47社の順。業歴100年以上の老舗企業は公表されていない。なお、各都道府県の労働局は支給申請の遡及調査に力を注いでおり、支給決定取消と悪質な不正企業の公表はしばらく続きそうだ。

 同調査結果は

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198011_1527.html